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執筆者の写真おぐ先生(小倉 丘礼)

【令和4年度】放課後デイの身体拘束廃止未実施減算を解説


身体拘束廃止未実施減算

児童の行動を制限する身体拘束は、禁止されるべき行為ではありますが、放課後等デイサービスでは利用する児童の特性上、本人や他の児童に危険が及ばないようにやむを得ず身体拘束を行う場合もあります。


この記事では、やむを得ず身体拘束を行う場合の注意点や、身体拘束廃止未実施減算の概要について詳しく解説していきます。

目次

1.放課後等デイサービスとは 2.身体拘束廃止未実施減算について  2-1.減算が適用となる要件

 2-2.減算額

3.身体拘束廃止未実施減算の算定の例

4.やむを得ず身体拘束を行う際に注意したいポイント

 4-1.本人の状態をこまめに確認する  4-2.保護者にしっかり説明を行う 5.まとめ

1.放課後等デイサービスとは

放課後等デイサービスは、身体障害や知的障害、発達障害などを抱えた、主に6歳から18歳までの就学児を対象とした施設です。障害を持っていても自立した生活を送ることができるように、集団または個別のプログラムやイベントなどの活動、他者との関わりを通じた発達支援を行います。保護者に対しては、子育ての悩み等の相談や、ケアの一時的な代行による保護者の時間の確保といった役割も果たしています。


放課後等デイサービスには、児童の障害の程度に応じて、一般的な放課後デイと、重症心身障害児特化型の放課後デイがあります。重症心身障害児特化型の場合は医療ケアを必要とする児童も多く、営業時間中の看護師の配置が義務付けられています。


放課後デイの利用にあたって、児童が落ち着かずに暴れてしまう、点滴や経管栄養などのチューブを抜いてしまうという場合も十分に考えられます。そんなときに、正当な理由なく児童の身体を拘束して行動を制限することは、児童福祉法において権利擁護の侵害や身体的虐待にあたるとされています。


また、正当な理由があって身体拘束を行う場合には、その内容を記録する必要があると定められています。身体拘束にかかわる規程が守られていない場合には、身体拘束廃止未実施減算の適用となります。


2.身体拘束廃止未実施減算について

身体拘束廃止未実施減算

令和元年に行われた調査によると、身体拘束廃止未実施減算が適用された放課後等デイサービスの事業所の割合は0.2%とごくわずかでした。しかし、それらは書類の不備など、事業所の認識不足によるものが多く、自治体による実地指導等で発覚する場合が多いと報告されています。令和3年度の報酬改定では、さらに要件が追加となりました。気付かないうちに長期間にわたって減算が適用されている事に気づかない場合を防ぐためにも、減算の内容についてしっかり確認しておくことが大切です。


減算が適用となる要件

以下のいずれかを満たした場合に身体拘束廃止未実施減算が適用されます。


①やむを得ず身体拘束を行ったが、拘束した理由や児童の状態、拘束した時間といった必要な情報を記録に残していない場合。


②身体拘束の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に(年に1回以上)開催していない場合。

委員会は事業所単位ではなく、法人単位での設置で構いません。また、事業所から委員会に参加する最小人数についての規定はなく、管理者または責任者の参加で可とされています。


③身体拘束の適正化のための指針を整備していない場合。


④従業者に対し、身体拘束適正化のための研修を定期的に(年に1回以上)実施していない場合。研修は、自治体や協議会が開催するものへの参加でも構いません。


上記の②〜④は令和3年度の報酬改定によって新たに追加された項目です。令和5年3月31日までは経過措置期間となっており、該当しても減算の対象にはなりません。


やむを得ない場合とは

やむを得ない場合とは、以下のすべてを満たす場合を指します。

  1. 切迫性:本人や他の児童の身体や生命、権利に危険を及ぼす可能性がある

  2. 非代替性:身体拘束を行う以外の方法がない

  3. 一時性:身体拘束が一時的なものである


身体拘束を行う場合や内容には以下のような例が挙げられます。

  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬等を内服させる

  • 自分で開けることのできない部屋に隔離する

  • 点滴や経管栄養等のチューブを抜かないように、腕を縛ったり、ミトン型の手袋を装着する

  • 車いすやいすからずり落ちないように、ベルトや車いすテーブルを付ける


減算額

1日につき5単位の減算となります。減算の該当期間に利用した児童全員分の報酬から減算となります。


3.身体拘束廃止未実施減算の算定の例

定員5名の重症心身障害児特化型の放課後デイにおいて、身体拘束廃止未実施減算が適用された場合の減算額の計算方法を例を用いて解説します。

地域単価を1単位=10円とします。


1か月間にわたり減算の対象となり、その1か月間の延べ利用児童数が100名であった場合の減算額は、


5単位 × 10円 × 100名5000円

減算額 地域単価 人数


以上のように計算されます。


4.やむを得ず身体拘束を行う際に注意したいポイント

身体拘束廃止未実施減算

身体拘束廃止未実施減算の適用にかかわらず、やむを得ず身体拘束を行う際に注意するべきポイントについて解説します。

  • 本人の状態をこまめに確認する

  • 保護者に説明を行う


本人の状態をこまめに確認する

身体拘束を行うことで本人や他の児童の安全を確保できたとしても、身体拘束により新たなリスクが生じることにも把握しておきましょう。例えば、身体拘束に用いたベルトの摩擦によって傷ができてしまったり、車いす等に座る時間が長くなることで皮膚が蒸れたり床ずれが生じたりする可能性もあります。隔離した場合には、本人の体調の変化に気付くのが遅れてしまうかもしれません。本人の状態を記録に残すことは義務付けられていますが、身体拘束に伴うリスクを事前に職員間で共有した上で、本人の状態をこまめに確認することが必要です。


保護者にしっかり説明を行う

令和3年度の報酬改定により、身体拘束の適正化のための指針を整備することが義務付けられたこともあって、身体拘束を行う場合について事前に保護者に説明し、同意を得ることが必要です。さらに、やむを得ず身体拘束を行った場合には、事業所内の記録に残すだけでなく、保護者にも状況の説明を行うことが大切です。保護者と情報を共有することで信頼関係を構築できるだけでなく、身体拘束に代わるよりよい対応方法を得られるかもしれません。


5.まとめ

身体拘束廃止未実施減算については、報酬改定によって追加となった項目があり、内容をしっかり把握する必要があります。また、身体拘束を行わずに支援できるよう、職員で情報を共有しながら環境整備や職員の配置等を検討していくことが何よりも大切です。


放課後デイGrannyでは、報酬の算定における相談や本部スタッフによる訪問などのサポートを受けることができます。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。


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