放課後等デイサービスの運営にあたって、手厚いサービスを提供することで報酬額が上乗せされる加算の仕組みがあります。一方で、定められた基準を満たしていない場合や、実施すべき業務を怠った場合には、報酬額が減少となる減算の対象となってしまいます。
この記事では、定員超過利用減算の対象となる要件や注意点について解説していきます。
目次
1.放課後等デイサービスにおける報酬決定の仕組み
2.放課後等デイサービスの減算の種類
3.定員超過利用減算について
3-1.定員超過利用減算が適用となる要件
3-2.定員超過利用減算の減算額
3-3.計算の例
3-4.やむを得ない場合とは
4.定員超過利用減算とならないために心がけるポイント
5.まとめ
1.放課後等デイサービスにおける報酬決定の仕組み
放課後等デイサービスの事業所が受け取る報酬額は、厚生労働省によって定められた「単位」をもとに計算されます。基本的に1単位=10円として計算されますが、1単位当たりの金額は自治体によって異なります。
報酬額には、基本報酬に加え、より充実したサービスを提供した際に適用される加算と、基準が満たされていない場合に適用される減算を加味して計算されます。
2.放課後等デイサービスの減算の種類
放課後等デイサービスの報酬決定にかかわる減算には、以下のような種類があり、それぞれ減算額が定められています。
| 減算額 |
定員超過利用減算 | 基本報酬の30% |
自己評価結果等未公表減算 | 基本報酬の15% |
児童発達支援管理責任者欠如減算 | 基本報酬の30%または50% |
身体拘束廃止未実施減算 | 5単位/日 |
開所時間減算 | 基本報酬の15%または30% |
これらの減算のうち、定員超過利用減算について解説していきます。
3.定員超過利用減算について
放課後等デイサービスでは、届け出ている利用定員を超えないようにサービスを提供する必要があります。一定以上の利用人数の超過があった場合に定員超過利用減算が適用されます。
定員超過利用がされている事業所には自治体から指導が行われ、指導に従わなければ放課後等デイサービスの指定が取り消しとなってしまいます。
令和4年2月に、定員超過利用減算が適切にされていないために多額の報酬額が請求されていると、厚生労働省から各自治体に通達がありました。その背景として、定員超過利用減算について十分に理解されていないことが挙げられ、定員超過利用減算についての正しい知識が求められています。
1.定員超過利用減算が適用となる要件
定員超過利用減算が適用となる要件は、①1日あたりの利用児童数と、②3か月間の利用実績の2つの基準で考える必要があり、①②のどちらかに当てはまると減算が適用されます。
①1日あたりの利用児童数で計算する場合
1日あたりの利用児童数が定員の150%を超過している。
計算式【利用者数 > 利用定員 × 150%】
②過去3か月間の利用実績で計算する場合
直近過去3カ月の利用者の合計数が、定員に3を加えた数に開所日数を乗じて得た数を超過している。
計算式【直近3月間の延べ利用者数>(利用定員+3)× 直近3月間の開所日数】
※上記①を遵守していれば、そもそも②の減算になることはありません
2.定員超過利用減算の減算額
基本報酬の30%が減算となります。
①1日あたりの利用児童数で適用となった場合は、該当した日に利用した児童全員に対し減算が適用となります。
②過去3か月間の利用実績で適用となった場合は、翌月の1か月間、利用した児童全員に対し減算が適用となります。下記のシートを使うと減算を適用させないといけない月が分かりますので参考にしてください。
参考:定員超過利用減算対象確認シート|船橋市
3.計算の例
定員5名の重症心身障害児特化型の放課後デイにおいて、定員利用超過減算の対象となる人数と、減算が適用された場合の減算額を例を挙げて計算してみます。
令和4年時点での基本報酬は、放課後:1,756単位/日、休校日:2,038単位/日です。
※地域係数を1単位=10円として計算します。
①1日の利用児童数で計算する場合
定員 × 150%
5 × 1.5 = 7.5
⇒1日あたり8名以上の利用で減算の対象となります。
ある放課後の1日に、定員人数を超えて8名が利用した場合の減算額。
1,756単位 (基本報酬) ×10円×8名×0.3(減算率) =42,144円
報酬額は減算前から42,144円引かれます。
140,480円-42,144円=98,336円
②3か月間の利用実績で計算する場合
上記①を遵守していれば、そもそも②の減算になることはありません。
4.やむを得ない場合とは
災害や虐待、その他やむを得ない事情があり利用定員を超過した場合には、定員超過利用減算の対象となりません。
以下のような場合は「やむを得ない事情」として認められる例があります。
障害の特性や病状により欠席しがちであり、定期的な利用が難しい児童に対し、継続した支援を行う必要がある場合
児童の家庭状況や地域の福祉資源の状況により、当該の事業所で受け入れをしないと児童の安全に関わるおそれがある場合
これらはあくまでも例であり、各事業所の状況が「やむを得ない事情」に当たるかは、自治体への確認が必要です。
4.定員超過利用減算とならないために心がけるポイント
先ほど計算したように、利用定員が5名の場合は、8名以上の利用で定員超過利用減算が適用となります。しかし、定員人数の遵守は絶対であり、定員を1名でも超えないように児童の利用日の管理を徹底する必要があります。
定員超過利用減算は、1日あたりの利用児童数と直近3か月間の利用実績の2つの視点で見なければならず、計算が複雑になります。厚生労働省が推奨している「定員超過利用減算対象確認シート」を用いて、毎月の請求業務の一環として確認すると良いでしょう。
5.まとめ
定員超過利用減算が適用となると、報酬額の大幅な減額により経営状況にも影響が出てしまいます。児童が安全に過ごせる場を提供するためにも、利用人数の管理は徹底して行う必要があります。
放課後デイGrannyでは、放課後デイの開業や運営におけるサポートを受けることができます。ぜひご検討ください。
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